
■ 家づくりにおける“理想と現実”
家づくりは「理想を形にする作業」だと思っていました。けれど実際に進めてみると、それは同時に「妥協との戦い」でもありました。
予算の上限、土地の条件、限られた面積、そして家族の意見。すべてを完璧に満たすことはできないからこそ、こだわる部分と諦める部分を見極める必要がありました。
僕たちが建てた30坪のローコスト住宅にも、「どうしても譲れなかったこだわり」と「理想を描きながらも妥協した点」が数多くあります。今回は、その両方を記録してみたいと思います。
■ こだわり① 照明計画とバブルシャンデリア
一番こだわったのは、やはり照明計画でした。
吹き抜けのリビングには、ホテルのロビーを思わせるようなバブルシャンデリアを採用。見上げたときの存在感は圧倒的で、空間の主役になっています。
さらに折り下げ天井には間接照明を仕込み、夜は柔らかい光で包まれるようにしました。これだけで「日常のリビング」が「非日常の空間」に変わる。家にいながら気持ちをリセットできるのは、この照明計画のおかげだと思っています。
■ こだわり② 色合いの統一
内装は黒・グレー・白を基調にしました。
壁紙は標準仕様から少しだけグレージュ寄りのクロスを選び、落ち着いた雰囲気に。アクセントクロスやタイルを組み合わせて、単調にならないようバランスをとりました。
家具もこのトーンに合わせて揃えることで、ホテルのような一体感が生まれました。色合いを決めるのは地味に大変でしたが、最終的に「どこを切り取っても統一感がある家」になったと思います。
■ こだわり③ 背面収納とパントリー
キッチンはホテルライクに見せるため、生活感をできるだけ隠す工夫をしました。
背面収納は二段では足りないと感じ、無理をして三段に。さらにその下には、自動で開閉するゴミ箱を置けるスペースを確保しました。料理中にゴミをスッと捨てられるのは想像以上に快適です。
そして譲れなかったのがパントリー。
限られた面積の中で収納を削る案もありましたが、やはり「隠せる収納」があると暮らしやすさが全然違います。ローコスト住宅でも、ここは絶対に残してよかった部分でした。
■ こだわり④ 子ども部屋と収納の工夫
子ども部屋はあえてクローゼットを削り、その代わりに机を置けるスペースを確保しました。収納は後から自由に増やせるけれど、勉強や趣味に集中できる空間は限られた面積の中で工夫が必要だったからです。
また、将来的にプロジェクターを取り付けられるよう下地を仕込んだり、扉を外してオープンに使えるようにしたりと、変化に対応できる設計にしました。暮らしながらアップデートできる柔軟さは、子育て世帯にとって大切な要素だと思います。
■ こだわり⑤ 玄関と見せる収納
玄関は広さを取るか、収納を取るかで最後まで悩みました。
スニーカー好きとしては大容量の靴収納が欲しかったけれど、壁で仕切ってしまうと玄関が狭く見える。最終的には「見せる収納」にして、棚に靴を並べるスタイルにしました。
おかげで玄関は圧迫感がなく、むしろ広く見えるように。お気に入りのスニーカーを飾る楽しみもできました。
■ 妥協① 洗面化粧台
本当は独立洗面台や造作の広いカウンターに憧れていました。
けれど30坪という限られた面積では幅が足りず、収納とのバランスも取れません。最終的には標準の洗面台を採用し、その代わりに周囲をタイルやアクセントクロスでデザイン。小さな妥協の中にも、自分たちなりの工夫を込めました。
■ 妥協② キッチンスタイル
アイランドキッチンにも憧れがありましたが、現実的にはスペースもコストも難しく、ペニンシュラ型に。
ただしペニンシュラでも十分ホテルライクに見えるよう、背面収納や間接照明で工夫しました。結果的にこれは「妥協」というより「最適解」だったと感じています。

■ 妥協③ トイレの位置
本当はもっと端に寄せたかったのですが、間取りの都合上、今の位置に。
ただ、実際に住んでみると不便はなく、むしろアクセスが良いので「これは妥協じゃなく正解だったかもしれない」と思える点でした。
■ 妥協④ 壁紙の選択
壁紙をすべてデザインクロスにするとコストが跳ね上がります。そこで、基本は標準のクロスを使い、ポイントだけをオプションにしました。
全面をこだわるのではなく、バランスを取ることで「ホテルライクな空気感」を出す。結果的に見栄えとコストの両立ができました。
■ 理想と妥協のバランスが生んだ家
こうして振り返ると、家づくりはこだわりと妥協の繰り返しでした。
「全部理想通り」は無理でも、「ここだけは譲れない」と決めた部分に力を入れ、その他は柔軟に調整する。その積み重ねが、結果として自分たちらしいホテルライクな空間を形にしてくれました。
妥協は決して負けではありません。むしろ、暮らしやすさを優先したり、予算を守ったりするための大切な判断だと思います。
そして、その裏には必ず「本当に大事なこだわり」が浮かび上がってくるのです。
■ まとめ
30坪という限られた広さ、ローコストという条件。その中で僕たちは、照明や収納、色合いにとことんこだわり、洗面やキッチンの形式では妥協しました。
完成した家は、豪華さでは大きな住宅にかなわないかもしれません。けれど、こだわりと妥協のバランスを取りながらつくり上げた家だからこそ、僕たちにとってはかけがえのない空間になっています。
ホテルライクな暮らしは、必ずしも大きな家や高額な設備が必要ではありません。限られた条件の中で、何を優先し、どこを削るか。その選択こそが“自分たちだけのホテルライク”を実現する鍵だと思います。
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